書
japanese calligraphy
もっと書に目を向けよう
現代社会は印刷した文字が氾濫しています。
また連絡手段も手紙に代わり電話やメールがほとんどです。
今や筆で書いた文字を見る事も少なくなりました。
筆で書いた文字は、命をあたえられ生き生きと躍動しています。
こういう時代だからこそ「書」というものにもっと目を向けてほしいと思います。
最近テレビで「美文字は誰」というタイトルで、タレントに字を書かせ採点する番組を放送していました。
誰もがもっと美しい字が書けたらいいなあと思ってる人は、少なからずいると思います。それにはちょっとした法則を身につければ、見違えるほど美文字を書けるようになります。
ペン字と筆字体では、質感は違いますが、書を心得ると簡単に美文字を書けるコツがつかめます。
一字を表現する少字数(一字書)
私と書道との出会いは小学生の頃ですが、それはすぐに終わってしまいます。
本格的に始めようと思ったのは京都の本山から佐賀に帰り、自坊の仕事に就いた30代の始めでした。
佐賀に帰って、はたしてどこの書道教室に行ったらいいのやらと迷っていました。 たまたま文房具用品を買いに行った店の柱に「2階書道教室」と書いた張り紙がありました。 私は、もうここでいいかと入った教室が竹之内先生の書道教室でした。 私は後で知ったのですが、先生は少字数(一字または二字)を得意とする佐賀の第一人者でもありました。
ちなみに書体は楷書、行書、草書、隷書、篆書(てんしょ)の五体があり、書道の作品は漢字、少字数(大字書ともいう)、近代詩文、かな、墨象、篆刻の部門に分けられます。
少字数は淡墨で草書体で表現するのが主流となっています。
淡墨にするには縮墨と言って、まず青墨をすりおろし水を加え微妙に調節しなければなりません。
薄過ぎても濃過ぎてもまた滲み過ぎてもいけません。非常に神経を使う作業です。
この縮墨の出来いかんによっては作品が大きく変わってくるからです。
先生は「一字書と言うものは半紙に絵を描くようなものだ。その一字のよさを表現し伝えなければいけない。紙との余白、筆の打ち込み、線の強弱、字のバランス、すべてが整わないといい作品にはならない。多字数の作品では一字、二字失敗しても気にならないが、少字数ではその一字で勝負しなければならないからだ」と指導をされました。
『喝』という作品がありますが、これは10年ぐらい前に佐賀書道展に出展し、佐賀県商工会議所連合会賞を受賞したものです。
濃墨で筆2本で書きました。濃墨は淡墨のように滲みませんから線の強さ、かすれ、余白がポイントになってきます。
私は最初、縮墨がうまくいきませんでした。
先生が「それなら濃墨で書いたらいい。濃墨の作品は少数派で目立つから」と言われ、今でも展覧会の作品は濃墨がほとんどです。
私も先生の教室に通って20数年が過ぎましたが、初めて一字書の作品を目の当たりにした時は、「エ、たった一字か」と安易に考えてしまいました。ところがもう大変、字のバランス、墨のかすれ具合など、四苦八苦でした。
しかし最近になってやっと少字数の奥深さに気づいた様な気がします。
普段の教室は、中国の古典の臨書が中心ですが、展覧会前になると少字数はもちろんですが、私は隷書体も好きなので漢字の作品にも取り組んでいます。
今は色々な書体で表現できる様になり、書が益々楽しくなってきました。
今後は苦手な行草の作品にも磨きをかけていきたいと思います。